視覚障害の感覚と室内の安全対策

最近、友人がスマホアプリのBe My Eyesで視覚障碍者のサポートを行ったそうです。

具体的には大型家電の向きが壁ときちんと平行になっているか見てほしいという要望でした。
ただし、それは数日内に知り合いに渡してしまうものでした。

それならなぜ、そんな短期間でも平行にこだわるのだろうという疑問をもったそうです。

几帳面に平行に合わせる必要性がどんな理由としてあるのかということと私は解釈しました。

個人的に斜めになっているのが嫌いだからとも考えられるのですが、ほかの側面として、視覚障碍者の安全上の問題かもしれないと私は思いました。

では、友人に答えたそのあたりをシェアしようと思います。

子供だったとき、皆さんは合わせ鏡で遊んだことはありませんか。
2枚の鏡を近づけてお互いを写るようにすると、鏡の中に鏡が写り、まるでトンネルのような空間が広がったように見えます。
つまり、存在していないはずの空間があるかのように感じられます。

実は、つるつるの面を持つ、大型家電も音だけで言えば鏡のようなものです。
壁も一種の鏡です。
この2枚の鏡の角度がずれると先ほどの合わせ鏡のような効果が音響に現れます。
つまり不要な反響音が発生し、視覚障碍者の空間認識を微妙にずらしてしまう危険性があります。
そしてそのずれは視覚障碍者が壁や柱と衝突する原因になる可能性があります。

物を壁に対して平行に置くことは、たとえ短期間だとしても安全対策としてやっておく必要があるのです。

音について、別の反響対策もあります。

私のリビングルームの入り口のそばの壁には、反響を打ち消すために角の部分を挟む2つの面を座布団で覆っています。
これが無いと、出入り口の扉とその左にある収納の扉を聞き違えてしまうことがあります。

このように反響に対する対策は、視覚障碍者の室内での動きに影響を及ぼします。

物理的にはこのようになります。
室内の元の音と反響音のタイミングのずれと元の音と反響音が重なって強調される周波数を聞くことで壁との距離が分かります。
強調される周波数は壁との距離が近いと高くなり、壁との距離が離れると低くなります。

人間は両耳に入った音のタイミングの違いを5000分の1秒まで聞き分けられると言われています。
これを音速にかけ合わせると、役6.8cmとなります。

また、強調される周波数の変化は人工的な音響効果としてはフランジャーと同じです。
雨音や飛行機の音など、たくさんの周波数が混じった音の場合に効果的です。

視覚障碍者は音を光のように扱って、生活のあらゆる場面で活用しています。

時々、このような視覚障碍者の目からみたハックを書いてみようと思います。

Be My Eyes IOS版
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コラム 第2回 お灸をしたところの皮膚が赤くなるのはなぜか

第2回 お灸をしたところの皮膚が赤くなるのはなぜか

前回は鍼を刺すと、筋肉の緊張が低下することを紹介した。
今回は熱刺激が血流の状態を変えるという話。
これも前回同様、体の防衛反応を利用している。
熱といえばお灸(きゅう)である。
きゅうの痕が残るのが気になる方はせんねんきゅうがある。
かまやミニなどもあり、これらのきゅうは燃焼するきゅうの周りに皮膚と接着する代があり、直接もぐさが皮膚に触れないようになっている。
すこし脱線したが、きゅうの熱は当然ながら皮膚の温度を上げる。
人の細胞は45℃以上になると、蛋白質が変性して死んでしまう。これを防ぐために、皮膚の下では血管を開き、多くの血液が循環するようになる。これは血液で局所の熱を冷やして、温度の上昇を防ぐためである。
血管が開いた様子は、皮膚が赤らんでくることで確認できる。
また局所の細胞では熱ショック蛋白が作られるようになり、細胞を壊れにくくしている。
これらの反応も熱から体を守る一連の防衛反応である。
実は、鍼でも、同じように血管が開いてくる。これは筋肉が緩むことに連動して起こったり、軸索反射など複数のメカニズムが重なり合っているので、詳細は省略する。

いずれにしても、はり、きゅうは血液の流れる量を変えることができる。

血液の流れを良くすると、どんなメリットがあるかを考えると
1.酸素と栄養素の供給量が増える
2.代謝産物の排出が早まる
3.各組織のホルモンの授受が活発になる
それに加えて、
4.免疫細胞や抗体などの供給が増える

これだけ挙げても読者はすでにお解りであろうが、血液は、組織、細胞にとって、命の源泉なのである。

今回は更に、はり、きゅう、マッサージとガン予防についても簡単にまとめておく。
まず、癌細胞は誰でも毎日5000個はできているといわれている。それでも、がんにならないのは、がん化した細胞を免疫細胞が見つけ出し、破壊しているからである。
ガン細胞に直接攻撃をかけるのは主としてNK細胞(ナチュラルキラー細胞)やNKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)である。
これらの細胞はガン細胞やウイルスなどに感染した細胞を攻撃し自殺に導いたり、破壊している。

ところがストレスがたまると、免疫系は全般に弱り、また体のあちこちに筋肉の張りが起こり、血液の循環もバランスが悪くなってくる。
そうすると、NK細胞やNKT細胞がまんべんなく巡回することが難しくなり、免疫系の監視が行き届きにくくなる。
また、比較的酸素の供給の少ない部分が発生し、発生したがんが増殖しやすい環境ができあがる。
そこではり、きゅう、マッサージで、血液の循環を変えると、リラックス効果と血液循環のバランスが改善されることにより、NK細胞やNKT細胞の監視が行き届くようになる。また、酸素の供給が増えることにより、ガン細胞の増殖しにくい環境となる。
癌細胞は蛋白質を餌として増殖するが、酸素による燃焼はしていないとされる。ミトコンドリアが機能していないのである。ミトコンドリアは酸素を用いて有機物を分解してエネルギーを取り出す一方、細胞の寿命とも関係している。
ガン細胞はいわばミトコンドリアを眠らせることで細胞の死をまぬかれているのである。そこで循環を変えて酸素を多く供給すれば、ミトコンドリアを活性化させ、増殖を阻む効果が期待できるのである。
このような理由により、ガン治療の研究において、いかにしてミトコンドリアを活性化させるかが、大きなテーマとなっているそうである。

次回は循環改善と感染症の関係について考えてみる。

鍼灸マッサージの効果について

- 鍼灸マッサージはどんな効果があるのか。

このコラムでは、鍼灸マッサージの現代医学的に知られている効果から、私が特に関心をもって施術に応用している中枢神経系に対する作用についてまでを、シリーズでまとめていきます。
これを読むと私の治療に対する考え方が分かります。
治療は治そうとする気持ちが大切であります。
しかし、このコラムでは、あえてそのような感情は抑えて、じっくり冷静な切り口で書いていこうと思います。
なお、コラム本文の引用については、誤解を避けるためにもなるべく全文の引用でお願いします。やむを得ず一部分の引用を行う場合は、出典を明らかにするためにも、アドレスを付記していただくことを条件といたします。

第1廻 鍼を刺すとなぜ筋肉は緩むのか

 あなたは、はりきゅう治療で使う鍼はご覧になったことはあるだろうか。
一般的には長さが3~6cm程度で太さは0.2mm前後である。
シャープペンシルの太さの半分以下である。
古代からはりの素材としては金属が広く用いられてきた。
現代では、銀やステンレスが主流である。
このような細いはりを皮膚から差し込むことで治療ができるのは不思議に思う人も多いだろう。

では、鍼を差し込むことによって何が起こるのだろうか。
今回は、筋肉が緩むことに注目したい。
筋肉は意識して力を発揮させようとしなくても、普段からある程度縮まろうとする力を出している。これを筋緊張とかトーヌスという。鍼を刺すと、筋緊張が低下する。つまり、筋肉が緩むのである。
鍼は銀やステンレスなど腐食しにくい金属でできている。腐食しにくいので、逆に人体への影響も少ない。溶けた金属イオンなどが残って、アレルギー症状を起こす危険性が少ないからである。

では、なぜ、筋肉が緩むのだろうか、
それは、人体の防衛反応であると考えられる。動物にとって、刺さったとげを早く抜くには周囲の筋肉が緩んだ方が都合がよい。
鍼はとげと同じく異物であるため、早く除去できるように筋肉が緩むのである。
特に筋肉の表面を覆う筋膜に鍼の尖端が達すると筋膜に存在する感覚受容器の働きにより、速やかに筋肉は緩むのである。

ところが、この変化は必ず起こるとは限らない、筋肉の緩み方にもばらつきがあり、期待するほど緩まないことも多い。
これについては、第4回でその理由を説明する。

ともかく、鍼を刺すと筋肉が緩むのは、動物としての防衛反応であり、だからこそ、この反応が起こりやすいともいえるのである。

次回はきゅうの熱刺激で皮膚が赤くなることについて考えてみたい。