コラム 第2回 お灸をしたところの皮膚が赤くなるのはなぜか

第2回 お灸をしたところの皮膚が赤くなるのはなぜか

前回は鍼を刺すと、筋肉の緊張が低下することを紹介した。
今回は熱刺激が血流の状態を変えるという話。
これも前回同様、体の防衛反応を利用している。
熱といえばお灸(きゅう)である。
きゅうの痕が残るのが気になる方はせんねんきゅうがある。
かまやミニなどもあり、これらのきゅうは燃焼するきゅうの周りに皮膚と接着する代があり、直接もぐさが皮膚に触れないようになっている。
すこし脱線したが、きゅうの熱は当然ながら皮膚の温度を上げる。
人の細胞は45℃以上になると、蛋白質が変性して死んでしまう。これを防ぐために、皮膚の下では血管を開き、多くの血液が循環するようになる。これは血液で局所の熱を冷やして、温度の上昇を防ぐためである。
血管が開いた様子は、皮膚が赤らんでくることで確認できる。
また局所の細胞では熱ショック蛋白が作られるようになり、細胞を壊れにくくしている。
これらの反応も熱から体を守る一連の防衛反応である。
実は、鍼でも、同じように血管が開いてくる。これは筋肉が緩むことに連動して起こったり、軸索反射など複数のメカニズムが重なり合っているので、詳細は省略する。

いずれにしても、はり、きゅうは血液の流れる量を変えることができる。

血液の流れを良くすると、どんなメリットがあるかを考えると
1.酸素と栄養素の供給量が増える
2.代謝産物の排出が早まる
3.各組織のホルモンの授受が活発になる
それに加えて、
4.免疫細胞や抗体などの供給が増える

これだけ挙げても読者はすでにお解りであろうが、血液は、組織、細胞にとって、命の源泉なのである。

今回は更に、はり、きゅう、マッサージとガン予防についても簡単にまとめておく。
まず、癌細胞は誰でも毎日5000個はできているといわれている。それでも、がんにならないのは、がん化した細胞を免疫細胞が見つけ出し、破壊しているからである。
ガン細胞に直接攻撃をかけるのは主としてNK細胞(ナチュラルキラー細胞)やNKT細胞(ナチュラルキラーT細胞)である。
これらの細胞はガン細胞やウイルスなどに感染した細胞を攻撃し自殺に導いたり、破壊している。

ところがストレスがたまると、免疫系は全般に弱り、また体のあちこちに筋肉の張りが起こり、血液の循環もバランスが悪くなってくる。
そうすると、NK細胞やNKT細胞がまんべんなく巡回することが難しくなり、免疫系の監視が行き届きにくくなる。
また、比較的酸素の供給の少ない部分が発生し、発生したがんが増殖しやすい環境ができあがる。
そこではり、きゅう、マッサージで、血液の循環を変えると、リラックス効果と血液循環のバランスが改善されることにより、NK細胞やNKT細胞の監視が行き届くようになる。また、酸素の供給が増えることにより、ガン細胞の増殖しにくい環境となる。
癌細胞は蛋白質を餌として増殖するが、酸素による燃焼はしていないとされる。ミトコンドリアが機能していないのである。ミトコンドリアは酸素を用いて有機物を分解してエネルギーを取り出す一方、細胞の寿命とも関係している。
ガン細胞はいわばミトコンドリアを眠らせることで細胞の死をまぬかれているのである。そこで循環を変えて酸素を多く供給すれば、ミトコンドリアを活性化させ、増殖を阻む効果が期待できるのである。
このような理由により、ガン治療の研究において、いかにしてミトコンドリアを活性化させるかが、大きなテーマとなっているそうである。

次回は循環改善と感染症の関係について考えてみる。