- 鍼灸マッサージはどんな効果があるのか。
このコラムでは、鍼灸マッサージの現代医学的に知られている効果から、私が特に関心をもって施術に応用している中枢神経系に対する作用についてまでを、シリーズでまとめていきます。
これを読むと私の治療に対する考え方が分かります。
治療は治そうとする気持ちが大切であります。
しかし、このコラムでは、あえてそのような感情は抑えて、じっくり冷静な切り口で書いていこうと思います。
なお、コラム本文の引用については、誤解を避けるためにもなるべく全文の引用でお願いします。やむを得ず一部分の引用を行う場合は、出典を明らかにするためにも、アドレスを付記していただくことを条件といたします。
第1廻 鍼を刺すとなぜ筋肉は緩むのか
あなたは、はりきゅう治療で使う鍼はご覧になったことはあるだろうか。
一般的には長さが3~6cm程度で太さは0.2mm前後である。
シャープペンシルの太さの半分以下である。
古代からはりの素材としては金属が広く用いられてきた。
現代では、銀やステンレスが主流である。
このような細いはりを皮膚から差し込むことで治療ができるのは不思議に思う人も多いだろう。
では、鍼を差し込むことによって何が起こるのだろうか。
今回は、筋肉が緩むことに注目したい。
筋肉は意識して力を発揮させようとしなくても、普段からある程度縮まろうとする力を出している。これを筋緊張とかトーヌスという。鍼を刺すと、筋緊張が低下する。つまり、筋肉が緩むのである。
鍼は銀やステンレスなど腐食しにくい金属でできている。腐食しにくいので、逆に人体への影響も少ない。溶けた金属イオンなどが残って、アレルギー症状を起こす危険性が少ないからである。
では、なぜ、筋肉が緩むのだろうか、
それは、人体の防衛反応であると考えられる。動物にとって、刺さったとげを早く抜くには周囲の筋肉が緩んだ方が都合がよい。
鍼はとげと同じく異物であるため、早く除去できるように筋肉が緩むのである。
特に筋肉の表面を覆う筋膜に鍼の尖端が達すると筋膜に存在する感覚受容器の働きにより、速やかに筋肉は緩むのである。
ところが、この変化は必ず起こるとは限らない、筋肉の緩み方にもばらつきがあり、期待するほど緩まないことも多い。
これについては、第4回でその理由を説明する。
ともかく、鍼を刺すと筋肉が緩むのは、動物としての防衛反応であり、だからこそ、この反応が起こりやすいともいえるのである。
次回はきゅうの熱刺激で皮膚が赤くなることについて考えてみたい。